絶対に別れてやる

「レジで金払っといてくれ」

 

祐二が右手のひらを上に向けてあたしに差し出す。

 

カゴは受け取ってるし、なに?

 

「ハンバーガー食ってくるから、金くれ」

 

「なんで?」

 

「おまえ、家で昼飯食ってきたんだろ」

 

「食べてきたよ」

 

「俺は、まだ食ってねえ」

 

祐二は無職だ。

 

知り合ってから2年経つけど、仕事してたことなんかほとんどない。

 

父親が借りてるアパートに同居してるから家賃と光熱費はタダ。

 

食費はあたしが出してあげてる。

 

服もときどき買ってあげてるし、CDや本を買うときもお金をあげてる。

 

半分ヒモみたいなもんだ。

 

それなのに祐二はいつも威張ってる。

 

なんでニ年も付き合っちゃったのかわからない。

 

あたしは別れたいといつも思ってるのに。

 

湿気の多い低い土地に建っている古い木造ニ階建アパート。

 

カビとゴミの臭いがする通路を通って、一番奥のドアを開ける。

 

「また鍵、掛けてないの?」

 

「盗られるものなんか、ねえよ」

 

あたしのお金で買ったCDがあるじゃない。

 

盗まれても、もう買ってあげないからね。

 

ふたりだけのときは、あんまり祐二に逆らわないようにしてる。

 

キレると怖いから。

 

「今日はビデオ屋、行かないの?」

 

「ああ」

 

「夕飯まで、なにしてる?」

 

「脱げよ」

 

「ちょ、ちょっと、待って」

 

「なんだよ、イヤなのか」

 

祐二が、チッ、と舌打ちした。

 

「今日は、お父さん、大丈夫?」

 

そのあと、三人でファミレスで食事するという、恥かしい思いをしたんだ。

 

「こないだみたいなの、もうイヤだからね」

 

「おまえが眠るからいけねえんだろ、今度から起きてろよ」

 

バカ、絶対に別れてやる。

 

「下だけでいいから、早く脱げ」

 

ほんとのほんとに別れてやるから。

 

「あっ……いい……っ」

 

「うっ……」

 

「あぁん……すご……いっ……」

 

「出すぞ」

 

「うん」

 

「くっ!」

 

「ああぁ……っ」

 

あたしが付き合う男って、どうしてみんなコンドーム使わないんだろ。

 

前の男は膣外射精だったけど、祐二は中で出したがる。

 

しかたないから避妊はあたしがしてる。