水の流れ

「ああっ、いやぁーーっ!」

 

気が狂うことも失神することもなく、あたしはイッただけだった。

 

脱力したあたしの脚を抱えて、武史さんがムスコを挿入してくる。

 

なんで?どうしてぇ?

 

イッたばっかりなのに、武史さんのムスコが入ってくるのが、ものすごく気持ちいい。

 

中で動かされると、わけがわからなくなってわめき続けた。

 

挿入されたまま、何度もイカされた気がするけど、よく憶えてない。

 

気がつくと、武史さんが使い終わったコンドームの口を縛ってゴミ箱に捨てるところだった。

 

いつのまにコンドームなんて付けたんだろう。

 

それも憶えてなかった。

 

「知美ちゃん、のど渇いただろう」

 

「あ……」

 

しゃべろうとしたら声が出なかった。

 

「叫び通しだったからね」

 

ヤダ、恥ずかしい。

 

「はい、どうぞ」

 

「武史さんも、のど渇いてたんだ」

 

のど仏を伝って落ちていく水の流れを目で追う。

 

意外と逞しい胸毛のない胸板からヘソの脇を通って、水滴が黒い繁みに滴り落ちる。

 

ムスコはすっかり萎れていた。

 

「今夜は、もう、無理だよ」

 

「あたし、そんなつもりじゃ……」

 

抱きすくめられてキスされると、あたしはまた濡れてきた。

 

「あんまり遅くなると、ご両親が心配するよ」

 

「はい」

 

地獄らーめん。

 

あたしは看板を見上げてため息をついた。

 

「なんで、この店なの?」

 

「挑戦だよ」

 

「はあ?」

 

10地獄ラーメンとは、つまり辛さ十倍のことだ。

 

20地獄ラーメンは、二十倍。

 

「二十倍ひとつと、十倍ひとつ」

 

「祐二、ふたつも食べるの?」

 

「十倍は、おまえが食え」

 

「なんであたしが食べなきゃなんないのよぉ」

 

祐二はなにも言わずに、壁を指差した。

 

十倍以上の辛さのラーメンを完食した人のサインがずらりと飾られている。