中学の同級生
ここにあたしの名前を書けって?
「バッカじゃないの」
「いいから、黙って食えよ」
黙って食べた。
というよりか、しゃべれなかった。
辛すぎる。
半分であたしはギブアップ。
顔中から汗が噴き出している。
舌はヒリヒリ、のどはカラカラ、目が霞んできた。
あたしの前に座っている祐二も、同じだった。
しかも、三分の一しか食べてない。
「おまえ、少し食え」
「ヤダ」
「いいから、ちょっと食ってみ」
麺を二本、スープをひとくち啜る。
「ウゲッ!」
「ぷっ、くくくっ、バーカ」
お金を払って店の外に出ると足元がふらついた。
まるで、酔っ払ってるみたいに笑いが止まらない。
「アハハハ、まったく、へんなもの食べさせないでよ」
「意外と食えなかったなあ、残念。
俺が十倍にしとけば名前書き残せたのにな。
ヒーヒーヒー」
「プッククク、本気で、あの店の壁に名前書きたかったわけ?」
「あったりまえだろ、ウハハハ」
「バカみたい」
「アッハッハッハッ」
「ヒーッヒーッヒーッ」
歩きながら、コンビニで買ったウーロン茶を半分ずつ飲む。
「ねえ、話があるって言ったでしょ」
「ああ、俺も、話がある」
「どこで話そうか」
「歩きながらじゃダメなのか?」
「うん、ダメでもないけど……」
祐二が急にあたしの腕を引っ張って道路を渡る。
「おまえ、今いくら持ってる?」
「お金?うーんと、七千五百円くらいかなあ」
「よし!」
「え、なになに?」
ご休憩四千円のホテルに引っ張り込まれた。
「なによ。入るなんて言ってないのに」
「たまには、いいだろ?」
あたしのお金なんですけど。
まったくなに考えてんのよ。
「へえ、意外ときれいなんだね」
「だろ」
「祐二、きたことあるんだ?」
「ねえよ。
だろうな、と思っただけ」
「ここさ、もしかしたら、中学の同級生が勤めてるかもしれない」
「へええ」
「まあ、いいけどね」