夫婦みたい

ローカル線の改札口を出ると、祐二が待っていた。

 

「ミニスカートなんか、穿いてくんなよ。オ・バ・サ・ン」

 

「ブーツも、似合わねえ」

 

「バカ!」

 

たったいま、通ってきたばかりの改札口に向かって走り出そうとするあたしの腕を祐二が掴んだ。

 

「帰るなよ。今日の予定が狂うだろ」

 

「二十五でミニスカート穿いたらいけないって法律でもあるの!オバサンはブーツ穿いちゃいけないってだれが決めたのよ!ムカツクから帰る!」

 

「騒ぐなよ。みっともねえだろ」

 

「うるさい!バカヤロー!」

 

祐二がハンドルを支えている自転車のタイヤをブーツの底で蹴る。

 

「痛ってえ」

 

自転車のどこかが、祐二の脚に当たったらしい。

 

ざまあみろ。

 

ふたりのあいだに自転車というガードがあることと、ここが路上で祐二が他人の目を気にしていることで、あたしは強気になっていた。

 

「今日は、帰る」

 

「帰るなよ。頼む」

 

情けない顔して、頼む、なんて言われたら帰れるわけない。

 

ハンドバッグを自転車の前カゴに放り込んで、荷台に横座りする。

 

サドルの下に両手で掴まると祐二がペダルを漕ぎ始めた。

 

「あ、桜……」

 

「まだ咲いてるわけねえだろ」

 

「蕾、いっぱいついてる」

 

祐二は忘れてるかもしれないけど、あたし、去年もここの桜見たんだよ。

 

おととしもね。

 

今年で三回目。

 

祐二と出会って、三年目になるんだよ。

 

「ジャガイモは、そっちじゃなくてこっちがいいな。タマネギは安いほうでいいや。あとは肉か」

 

祐二んちの近くのスーパーで食料品の買い物。

 

こうしてると夫婦みたい。

 

冗談じゃない、うう、寒い。

 

「あ?オバサンが薄着してくっから、寒いんだろ」

 

「別に、寒くないってば」

 

精肉売り場の気温は低いけど、あたしが寒いのは体じゃないんだよ。

 

祐二、全然わかってない。